2009年02月03日

整数比と白銀比

久米繊維本社プレスルーム

久米秀幸さんがご自身のブログで僕が設計を担当させて頂いた
久米繊維本社プレスルーム・プレゼンの時のエピソードを取り上げつつ、
大江戸線の列車の”間”を面白おかしく書かれていますね(笑)。
大江戸線や銀座線は他の地下鉄に比べても確かに狭く、
あの狭さが何とも言えない空気感を醸し出しているのではないかと
仮説を立てられている訳ですが(笑)、
それは和のモジュールから来てるのではないかと。


面白かったので、ちょっと調べてみたのですが(笑)、
大江戸線の電車は「東京都交通局12-000形電車」と言うそうで
wikipediaによると・・

車両全幅が2,498mm
室内全高が2,100mm

なんだそうです。比率で1:1.19
この比率、整数比の比率と近いんですね。
3辺の比が整数になる直角三角形の整数比
(中学の時に三平方の定理ってやりましたよね。笑)が解り易いのですが、
ミニマムで3:4:5、高さ3:幅4で近似値1.333
実際は車両のボディ厚があったりしますが、その厚みを考慮すると
正方形(直角二等辺三角形の辺の比率=白銀比)に近くなります。
やや強引ですが、この部分が和に感じるのではないかと思った訳です(笑)。
実際、これを見込んで電車のデザインをしたのかどうかは解りませんが、面白いです。

和のモジュールというと尺、寸に代表される尺貫法が代表的ですが、
比率的には整数比と白銀比が和の代表的な比率になります。

整数比は、建築学的に古今東西広く使われていて、ルネサンス建築
(15世紀のイタリア)では、レオン・バッティスタ・アルベルティによって
2:3、3:4、1:2、1:3、1:4、8:9という整数は
「建築形態の美や調和が生み出される数比」として定義していますし、
日本では畳、障子、襖などが1:2 (3尺×6尺)の整数でモジュール化されています。
ちなみに畳は書院造りでほぼ完成したと言われているのですが、
書院造りは室町時代ですから、ルネサンスの時期と合致するんですね。
この辺も面白いです。

もう一つの白銀比(silver ratio)は、「大和比」ともいうのですが、
これは日本が白銀比を世界で最も早く活用した事
(発見したかどうかは定かではないのですが)が由来と言われています。
日本建築ではかなり昔から使われてきたモジュールで
近似値は「1:1.4141=1:√2 」で正方形の半分の三角形である直角二等辺三角形の
辺の比と同じ。正方形の一辺と対角線の比率ともいえます。

法隆寺の五重塔の平面における短辺と長辺の比率や四天王寺敷地の
平面における短辺と長辺の比率など、室町時代以前から使われてきたモジュールで、
大工道具の一つである「さしがね」は今でも裏面に白銀比が
目盛りとして残っています。ちなみに用紙のA版B版も全て白銀比。
風呂敷や畳(正方形の半分の長方形)は正方形を基本にしていますが、
これも白銀比の応用といえます。

白銀比は、連分数展開がきれいで例えば江戸時代に公用紙として使われた美濃紙が
ベースになっているB版の用紙を半分に折ると1/2の同形状の用紙ができます。
畳や建材で多くの白銀比が使われているのは「汎用性の比率」だからであり、
資源の貧しい日本では、その素材を合理的に使いこなす事ができる
(無駄を省ける)比率だったからです。

ちなみに生け花で有名な池坊の比率(花の高さの比)が7:5:3にも、俳句の5:7:5にも
必ず、5:7という白銀比の比率が見え隠れしますね。それは白銀比の持つ並びや
形状の美しさが日本人の美意識に適うものだからだと思うのです。

久米さんのプレスルームでもデザインする上で整数比と白銀比を
結構使っています。冒頭の画像はエントランスの部分ですが、
ガラスのファサードを含む内側がプレスルームのリノベーションで改装した部分で、
外側のパネルは元々ビルの完成当初からの姿になります。

設計に取りかかる前に実測する訳ですが、この時ファサードの躯体の比率が
1:2の整数比になっていた事に気がついたんですね(白数字)。
これは当然、僕が設計した訳ではなく、このビルを設計された建築家が
意図的に設計したものだと察して、この整数比のファサード形状は生かして、
テンパーライトのガラスドアを設置する位置関係でスマートに和を感じる
入り口が創れないものかと試行錯誤したんですね。
そこで白銀比を応用してガラスドアの納まる位置関係(黒数字)を決めた訳です。

久米さんとのブリーフティングでは「海外から観た和=ZENスタイル」
「日本でこそ創りえるもの=JAPAN MADE」というお題があり、
それを空間として表現しないといけない訳です。
そこでテクスチャーに頼った和ではなく和のモジュール(尺寸)を駆使した空間を
創りましょうとなったのですが、同時に無意識に対比して見る部分については
日本の比率(白銀比)を応用しようと思った訳ですね。

プレスルームのインテリアでの白銀比は探してみてのお楽しみとして(笑)残しますが、
日本のモジュールは凛としていて、やっぱりいいですね。。


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2009年01月18日

柄にもなく・・

秋葉原

先日、僕の事務所のクライアントでその会社のチェーストア・オーナー向けのセミナーの講師をしてきました。講師をやるのは生まれてから3回目(笑)なのですが、このクライアントの部長さんと食事した時に僕がお話しした事が面白かったらしく、「ぜひうちの取引先オーナーにも聞かせてあげたい」となり、柄にもなくお話しする事になりました。

このセミナーは、店舗のオーナーをやっている方やクライアントの出店担当者、企画担当者向けのセミナーで、講師は僕含めて3人。僕は2番目だったんですけど、デザイン・ブランディングのお話を中心に、雑談も交えながらお話ししてきました。

その時にお話しした事を、ダイジェストで・・・

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1-1 はじめに

A社さん(クライアント)も含めデザインを事業の戦略に取り入れている会社がとても増えましたが、その多くはブランディングの一環としてデザインを戦略的に取り組む事例が増えました。私たちは商空間やVIをつくるデザイン事務所なので、店舗空間やロゴ、販促ツールなどを手がけさせて頂いていますが、デザインに対しての期待やデザインの目的に対しての差やジャッジする際の意思決定も含め実感として多様化しています。人々の購買意思も以前なら「値段の安い、高い」や「ブランド力(有名である)」でしたが、今はそれだけに留まらず、「デザインの良さ」や「誰によって創られたか」や「どんな想いが込められたか」まで確認し、購買する際の判断基準にしはじめているからです。

1-2 デザインの役割

デザインには「社会性」「科学性」「審美性」の3つの大きな要素がありますが、ブランディングとしてのデザインの役割は、「その対象(商品やサービス)のマインドを明快に伝える事」です。例えば商品であれば、その商品の持つ魅力やこだわりを空間デザインやロゴマークなどに意味として盛り込みます。デザインのもつ「カタチ」の中にどんな意味が込められているか。またはその商品を手に取った時に廻りの環境がその商品が魅力的にサポートしているかが大切になってきます。

いま、デザインがとてももてはやされていると思うのですが、それは「そのデザインの中に込められた意味に共感したい」からだと思います。それは「商品やサービス」にも同じ事が言えると思いますが、同時に「強い使命感」のようなものが不可欠です。以前であれば、商品やサービスの品質が多少悪くても、商品デザインや空間デザイン、ロゴマークなど「タッチポイント=顧客接点」の見栄えが良ければ通用する時代がありましたが、今はそれだけだと見透かされ易く、売れにくくなっている。なぜなら、インターネットなどの情報の展開が速く、簡単に商品やサービスのレビューをされてしまうからです。デザインを良くする事で顧客の期待感は上がりますが、その期待感に「商品やサービス」の品質が伴わないと「これだけ期待したのに、実際はそうじゃなかった」となってしまいます。

逆に、強い使命感を持ち、商品やサービスに自信を持っている企業がお店がデザインに力を入れると顧客に対して「マインドを明快に伝える」事が出来、魅力を伝える事ができます。なんでも出来る程デザインは万能ではありませんが、商品やサービスを含めたコミュニケーションとしての魅力を伝える手助けは、かなり出来ると思っています。

1-3 デザイナーとして考えるブランディング

私は商空間や商業建築をデザインするデザイナーですが、デザイナーとして考えるブランディングについてお話ししたいと思います。最近よく「ブランディング」というお話が出てきますが、「ブランディング=ブランド化」という事になります。「ブランド化」を単に「差別化する事」と片付けてしまう場合があるのですが、私は「ブランディング=その商品やサービス(もしくはその企業そのもの)に惹き付けられる魅力」だと思っています。置き換えれば「惹き付けられるだけのファンがいる事」とも言えますが、先程お話しした通り、「惹き付けられる魅力」を生むには空間やロゴなどのデザインだけでなく「商品やサービスの魅力」がまず先にないといけないと思っています。その「魅力」を空間やVI、プロモーションを通じて伝え語ること。この地道な作業が結果として「惹き付けられるだけのファン」を創るんだと思います。

・・・ここからは雑談程度で

デザイン&ブランディングの事例で良く話が出てくる会社にApple社があります。私も10代から愛用しているパソコンメーカーですが、昨年リ・ブランディングし社名から「Computer」を外しました。これは、Appleの主力商品がコンピューターだけに留まらず、iPodやiPhoneなど、シリコンオーディオから携帯電話までリリースし、それらが非常に良く売れている事にも起因しています。顧客に「迷わせない」ようにフォーカスを当てた結果です。Appleのプロダクトは洗練されたデザインで有名ですが、Appleが素晴らしいのは徹底している事。例えば、シリコンメーカーの表示を例に挙げますが、WindowsのPCですと必ずシリコンメーカーのステッカーが貼っています。シリコンメーカーであるintelやAMDからすれば、自社の製品をアピールする重要な手段になっていた訳ですが、Appleのコンピューター(Mac)は一度もこのステッカーを貼った商品を出していません。これはAppleのデザインにとって邪魔にすぎず、商品の魅力を下げてしまうからです。このステッカー一つでもかなり交渉したと思うと、そこに対する彼らのこだわりが垣間みれます。面白いのは、MacがCPUをintelに変更する際に世界中のMacファンは大方「Appleはきっと貼らないだろう」と予測していた事。彼らの期待(?)に応えた訳ですね。

Appleは80年代の後半から90年代の一時期に、業績が低迷した時期がありました。当時も優れたインターフェイスデザインでパーソナルコンピューターをリードしていたのですが、なぜ低迷していたかというと、一番はOSの信頼性がとても低かったんですね。今では信じられないのですが、当時のMacは良く止まる(かたまる)事が多かったのです。いかにインターフェイスが優れていても、よく止まっていては話にもなりません。この辺は、Appleの創業者が追い出されていた時期(今はまた復帰していますが)と重なるので、Appleの持つ製品哲学が実際の製品品質に追いついていなかったとも言えます。いかに製品に哲学があり、デザインが良くても、その品質が追いついていなければ、顧客は離れてしまう良い例だと思います。

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セミナーの際はKeynoteを使ってビジュアルを織り込みながらお話ししたのですが、その時に準備した原稿が上記のテキストです。これを何回か読み直して、雑談も交えながらお話ししたのですが、最後(Appleの話の後)は、このクライアントとの取り組み、その中に込めた意味などを解説しました。この部分は、守秘義務もあるのでここでは書けないのですが、おかげさまで好評でした。

今回思ったのは、頭の中が整理されていないと上手くお話しできない事。プレゼンテーションも同じなのですが、これは場数が必要ですね(笑)。原稿を用意しても殆どその場では読まなかったですし、多分その方が聞いてくださっている方も話の臨場感があって良かったのかなと思っています。

ともあれ、人前でお話しするのは、なかなか大変です(笑)


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