2007年06月04日
谷口吉生さん

↑Photograph: mobreporter @ Creative Commons
近代の日本の建築家で、僕が敬愛してやまない建築家の一人が谷口吉生さんです。ニューヨーク近代美術館(MoMA)新館の設計競技(コンペ)で一等を取り、2年前にオープンしたことで脚光をあびた建築家です。国際的には殆ど無名であった(作品の多くが国内に点在)こともあって、コンペが決定した当初はかなり話題になったのですが、谷口デザインの美術館や建築を見れば、MoMAの担当者がわざわざ日本まできてコンペのオファーを出したかうなずけると思います。
僕が好きな谷口建築は、このMoMAと上野の東京国立博物館の敷地に隣接する法隆寺宝物館、香川県立東山魁夷せとうち美術館の3つ。谷口建築では比較的近作になるこの3つの施設は、各々が必要とするプログラムに対して実直に取り組んでいる感があって、そして日本らしさ、繊細さを忘れていないところ、建築家の芸術性が優先され展示作品や利用者への配慮が二の次的になりがちな美術館建築でも、建築に触れた人々への配慮が行き届いていて素晴らしいのです。

↑Photograph: Chie Shimodaira @ Creative Commons
MoMAに関してですと、過去数回にわたり拡張工事を経験(1950年〜 60年にフィリップ・ジョンソンの手による東翼を増築と、1984年にシーザ・ペリの手によるガーデン翼の増築)しています。大規模なものとしてですが、施設が肥大化していくなかで複雑で回覧しにくい状況が避けられなかった訳です。新館の設計で谷口さんが提唱したのは「歴史や文化の脈略を継承しながらMoMAを大胆で新しいミュージアムに統一、再編する」という考え方です。これは実際現地に脚を運ばないと判りにくいのですが、53rdと54rdストリートを結ぶプロムナードとして機能させているロビー、モノトーンのコントラストとカーテンウオールで覆われたファサードはNYCの摩天楼の街並みに溶け込み、周辺環境にも配慮されている部分をみてもうなずけます。室内に関して言うと開放的の一言につきます。
建築のエレメントとしては、法隆寺宝物館と通じる部分があって庇となる部分の処理や柱の繊細さ、控えめなデザインだけどそのスケールバランスで圧倒されます。古来、日本の建築物は主に木によって造られてきた訳ですけど、木の場合「仕口/しぐち」と呼ばれる止め方の加工が必要
になってくるのでその加工がデザインに影響を与えてきました。その伝統的な仕口をデザインの要素としてMoMAには盛り込んでいて、さりげなくアイデンティティを表現している部分が渋いのです(笑)。東京ですと法隆寺の宝物館でもおなじエレメントが見られます。谷口吉生さんの建築は日本のマインドが凝縮されているのです。。
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